「睡蓮(すいれん)」で知られる印象派の画家モネの作品に「ルーアン大聖堂」がある。フランス北西部にある大聖堂をほぼ同じ角度から、朝や日没など時間や天気が異なる絵を何枚も描いた。光の加減によって劇的に変わる色彩の妙に目を奪われる▼日光市の公務員北山建穂(きたやまたてほ)さん(46)が写真集「四季彩図鑑」を出版した。仕事がきっかけで撮影を始め、同市内の豊かな自然や社寺などを被写体にした写真を用いて、千色以上あるとされる日本の伝統色のうち105色を紹介した▼あまりの美しさに息をのむ。緑や赤、青などと何げなく表現している色が微妙な違いで細かく分類され、風情あるそれぞれの名前が趣を添える▼同じ場所でも、時間帯によって色が変わる。「一期一会。写真は光と瞬間の芸術です」と北山さん。モネもきっと絵に同じ思いを託していたのだろう▼自由に撮れるのは仕事が終わってから。おのずと夕暮れの写真が多くなるという。空やその水鏡になった田んぼが赤く染まった色「朱砂(しゅしゃ)」や、山の向こうに日が落ちて闇にのみ込まれる瞬間を捉えた「伯林青(べれんす)」などは、奇跡のような輝きをたたえる▼新型コロナウイルスの感染拡大で、遠出できない日々が続く。それでも身近な場所には、一期一会の色がそこかしこに隠れている。図鑑を片手に、色を探しにいきたくなった。