普段はない「違和感」を覚えたという。栃木市と群馬県板倉町、埼玉県加須市の境が交わる地点を示す「三県境プレート」がなかった。17日、見回り中の栃木市職員が気付いた▼渡良瀬遊水地の南側に、この地点がある。三つの県境が交差する例は全国に40カ所以上ある一方、平地にあって「3県を3歩で制覇できる」のはここだけだそうだ▼5年前、3市町が観光スポットとしてアピールしようと測量を行い、県境を示す境界標のプレートなどを設置した。水田の間をY字型に伸びる幅約30センチの小さな用水路が各県を隔てており、「三県境プレート」は交点に置かれた▼真ちゅう製で直径は8センチ、コンクリート支柱の先端に固定されていた。強引に引き剥がされた形跡が痛々しい。昨夏には来訪者向けに置いた記念スタンプがなくなっており、相次ぐ災難に関係者はショックを隠せない▼「三県境」がよく知られていなかった20年以上前から、ユニークさに目を付け案内板やベンチなどを整備してきた栃木市の古沢満明(ふるさわみつあき)さんが1月、86歳で他界した。「地域の役に立てば」が口癖だったという▼盗難か。いたずらでも度が過ぎる。「三県境プレート」は、この場所にあってこそ価値がある。あの「違和感」は亡き古沢さんの訴えと信じたくなる。とても悲しんでいるのに違いないのだから。