重症の新型コロナウイルス患者の治療にあたる医療スタッフ=12日午後、下野市薬師寺(自治医大付属病院提供、写真は一部加工しています)

 栃木県内で新型コロナウイルスの感染急拡大が続く中、重症患者の治療を担う自治医大付属病院集中治療部の布宮伸(ぬのみやしん)部長(63)が12日、下野新聞社の取材に応じた。最も重い症状の患者が入る集中治療室(ICU)は満床で、必要な治療が受けられない患者がいるという。コロナ以外の診療への影響も生じている。「現場は限界に近い。医療が崩壊しつつある」と訴えた。

 同病院は17床の重症病床がある。その一部を占めるICUは、人工呼吸器や人工心肺装置ECMO(エクモ)を必要とする患者が入院する。満床が続いており、「人工呼吸器を使った方が早く良くなる」と考える患者が入れない。別の病院からは重症化した患者の受け入れを求められるが、応じられなくなっている。

 県の発表によると、11日時点で県内の重症病床の確保数に対する使用率は37%。余裕がありそうに見えるが、通常の医療体制を維持しながら、全ての重症病床を稼働させるのは困難という。「余力はほとんどない。恐らく、5割を超えるようなことがあれば完全にパンクするだろう」とみる。

 影響は一般診療にも及ぶ。術後にICUへ入ることを前提に行う手術は、コロナ患者で部屋が使えなければ延期せざるを得ない。既に手術を減らす対応が一部で取られている。

 「がんなど遅らせることができない手術をどうするか。かじ取りが非常に難しい局面になる」と懸念。「救急も含め、コロナ以外の通常診療に大きな影響が出ているのは間違いない。このままでは大学病院としての使命を果たせなくなる」と強い危機感を示した。

 ICUを増やそうにも、運用する人材が限られるため難しい。コロナによる肺炎は特に慎重な対応が求められる。「人工呼吸器があれば誰でも治療できるわけではない」と明かした。

 入院患者は、重症化しづらいと言われてきた50代以下が中心。全員が感染力の強い変異株「デルタ株」の感染者で、重症化の速度もこれまでより早い傾向にある。「デルタ株は確実に違うウイルスになっている。若いから重症化してもすぐよくなるということは全くない」と言い切る。

 重症患者は全て、ワクチンを2回接種し終えていない人という。「ワクチンはきわめて有効。打てる人はぜひ打ってほしい」と呼び掛けた。