東京五輪の閉会式に入場する日本の選手たち=8日夜、国立競技場

 あっという間、駆け抜けるように過ぎ、しかし濃密だった17日間。東京五輪は人々の記憶に数々の感動を刻み、国立競技場で8日夜、フィナーレを迎えた。

 国旗入場で柔道男子60キロ級の金メダリスト高藤直寿(たかとうなおひさ)らが日の丸を運び、閉会式に花を添えた。次々と登場する205カ国・地域と難民選手団を眺めながら、大会のハイライトがフラッシュバックする。

 日本が史上最多58個のメダルを獲得した今大会。金メダル第1号は高藤だった。新採用の都市型スポーツを中心に若い力が躍動。最年少13歳の金メダリストも誕生した。若手が台頭する一方、バドミントンの桃田賢斗(ももたけんと)ら力を出し切れずに去った優勝候補もいた。

 閉会式にはスポーツクライミングの楢崎智亜(ならさきともあ)が参加した。最高峰の舞台の難しさを知った世界王者。パリ五輪でさらに強くなった姿を見せてくれるはずだ。

 史上初の1年延期の末、ほぼ無観客で実現した東京五輪。直前まで開催の是非も問われた。新型コロナウイルスと戦いながらの、異例ずくめの祭典だった。

 だが、57年ぶりに東京へ戻った聖火は、暗くなった人々の心を照らした。その光の下で各国選手らが手をつなぎ、輪になって迎えた大団円。主題が何度も現れる輪舞曲(ロンド)のように、日替わりのヒーロー、ヒロインが大会をつなぎ、世界が心を躍らせた。

 「アスリートが大会に魂を吹き込んだ」。国際オリンピック委員会のバッハ会長は振り返った。未知の恐怖に立ち向かい、そして打ち勝つこと。コロナ禍でアスリートたちが奏でてきたその旋律は、今も私たちの心に響きわたる。

 「+1」に込められた期待、不安、夢、希望-。全てを凝縮して、五輪は輝いた。