2019年の世界選手権に兄弟で出場し、リードのコースを確認する楢崎智亜選手(左)と明智さん。パリ五輪でも2人そろっての出場を目指す=19年8月、東京都内

 「きっと勝ってくれる」。東京五輪のスポーツクライミング男子複合が3日、予選を迎える。出場する楢崎智亜(ならさきともあ)選手(25)=宇都宮市出身=の弟で、プロクライマーの明智(めいち)さん(22)は兄の活躍を確信する。自身は選考基準の変更という不本意な形で出場がかなわなかった東京五輪。3年後のパリ五輪に兄弟で出場することを目指し、奮闘を続けている。

 明智さんは小学2年生で競技を始めた。187センチの長身を生かし、2018年のアジア選手権ではボルダリングと複合の2冠、19年の世界選手権では5位入賞を果たした。現在は茨城県を拠点に、智亜選手や同じく五輪代表の野口啓代(のぐちあきよ)選手とともに練習している。

 五輪の1年延期について「本人はつらいと思う」と智亜選手をおもんぱかる。19年に複合で世界選手権を制し「金メダル候補」と言われ続けた2年間。重圧は計り知れない。延期となり、追い掛けるライバルも力を付けてきた。

 そんな中、明智さんは普段通り接することを心掛けてきた。「周りは五輪だから頑張ろう、みたいな対応をする。だからこそ、僕は普通でいたい」

 兄弟での五輪出場の可能性は十分にあった。智亜選手が代表決定後の19年12月、フランスで開かれた五輪予選で3位となり、残り1枠を争う権利を得た。ところが国際スポーツクライミング連盟が五輪代表の選考法の解釈を変更。五輪に挑戦する機会を失った。

 「智(とも)君もすごく落ち込んで、泣いてくれた」と振り返る明智さん。思わぬ形で選考が終わり、モチベーションが下がった。自分のクライミングを映像で見直し、登りたいときに登る。そうするうちに「また一から頑張ろう」と思えるようになった。

 応援に回る東京五輪。智亜選手について「負ける姿は見たくない。どうせなら、強くなった僕に負けてほしい」と笑う。「任せといてくれと言っているので、大丈夫だと思います」。表彰台の一番高い場所にいる兄の姿を見据えた。