女子板飛び込み準決勝 榎本遼香の5回目の演技=東京アクアティクスセンター

 笑顔も、涙も、尊く輝いて見えた。努力を実らせた栃木県初の五輪ダイバーの熱い夏。「また戻って来たいなって思えるような、夢の舞台だった」。女子板飛び込みの榎本遼香(えのもとはるか)の心の中は、充実感と未練が入り交じっていた。

 早い演技順ほど点数が出にくいとされる競技。2番目の不利な状況で必死に食らいついた。「怖がらずに乗れた」。1回目の踏み切りを先端中央に攻めて納得のスタート。2回を終えて12位の決勝圏内につける。

 苦手な3回目で順位を落とすのは想定内。だが、逆転を懸けた得意の前逆宙返り技が決まらない。踏み切りがずれてミス。「残念な感じが残ったが、先生(栃木ダイビングクラブの松本行夫(まつもとゆきお)監督)とやってきたことをしっかり出して、楽しく締めくくる」。気持ちを切り替えて出し切ったが17位。12人で争う決勝進出の目標には届かなかった。

 波瀾(はらん)万丈の競技人生。「辞めるきっかけはたくさんあった」。選手生命を脅かした肺の腫瘍の手術や、苦しいリハビリ。手首や肩、足のケガは数え切れない。しかし、その度に奮い立てたのは「五輪に出たい」という純粋な思い。自ら選び、伸ばし続けた枝の先に大輪の花を咲かせた。

 中学入学直前に飛び込みを始め、多くの先輩の背中を追い続けてきた。今は立場は変わり、憧れの的になった。練習では後輩たちが「私も五輪に出たい」と言う。世界の舞台を身近にし、「(子供たちが)自分が見てもいい夢なのかな、というものに私ができた」と誇りと喜びを感じている。

 メダルを争うステージには立てなかった。それがまた原動力になる。「自分の納得のためにも、次を目指してもいいかな」

 真っすぐに目指してきた「TOKYO」。その先にまた、見たい景色があった。