宇都宮市の大谷石は火山灰が海底に堆積してできたもので、柔らかく加工しやすい。使用された最も古い例は、今から約1500年前に造られた古墳の石棺だという▼江戸時代以降は豪商の屋敷や民家の蔵、塀などさまざまな場所に使われてきた。加工しやすい性質を生かし、昭和30年代に建材以外の新たな商品開発を行ったのが大谷石美術工芸生産者組合である▼原石から作品の寸法を割り出し、かたどりを行った後、削りを繰り返してカエルの置物や灯籠など室内外のインテリアに仕上げる。素朴な石のぬくもりが土産物として人気を呼び、多い時で50人ほどが石細工に関わっていた▼製造販売をする同市大谷町の渡辺伸一(わたなべしんいち)さん(77)は「ドライブインや土産物店が軒を並べていた頃が最盛期。陥没事故で観光客が激減してから作り手も減り、現在は数人程度。後継者難が課題」と言う▼同所でカフェとインテリア雑貨の販売などを行うロックサイドマーケット社長の高橋智也(たかはしともや)さん(42)は今月、英国のネット販売会社と契約し、大谷石製の一輪挿しや植木鉢など50点を輸出した。新たな販路を開拓し、大谷石の魅力をPRするのが狙い▼コロナ禍でネット販売の利用が増え、日本の伝統工芸品人気が高まっている。新しい風が大谷石細工の可能性を広げるきっかけになるかもしれない。