男子200メートル個人メドレー準決勝のレースを終え、感極まる萩野公介=東京アクアティクスセンター

 「泣いてる…」。東京五輪競泳男子200メートル個人メドレー準決勝終了後、萩野公介(はぎのこうすけ)選手(26)=小山市出身=が流した涙に、かつての指導者は思わず声を漏らした。リオデジャネイロ五輪で金などメダル3個を獲得後、けがや不調に苦しんだ。壁を乗り越えて決勝にたどり着いた姿を関係者はたたえた。

 「苦しかったと思う。お世話になった人に恩返しができた、そんな思いもあったのではないか」

 萩野選手を高校3年まで約10年間指導した、宇都宮市のみゆきがはらスイミングスクールの前田覚(まえださとる)さん(49)は、決勝進出を決めて涙ぐむ萩野選手の気持ちを代弁する。

 自らもこみ上げるものがあった。2019年春。前田さんは丸刈り姿の萩野選手と向き合った。けがや不調で休養を発表。その報告に訪れていた。

 「競技をやめるかも」。そんな不安もあり、明るい思い出話に努めた。その場で、萩野選手は断言した。「東京五輪を目指します」

 前田さんは「公介は夏に縁がある」と感じる。もし20年に予定通り開催されていたら-。「恐らく出場できなかった」と思う。

 決勝ではライバルとして競い続けてきた瀬戸大也(せとだいや)選手とともに泳ぐ。「不調だった頃、瀬戸選手の活躍を見てつらかった時期もあると思う。瀬戸選手がいたから公介も頑張れた。最後は一緒に泳げるという喜びをかみしめてほしい」

 3学年先輩で同スクールで一緒に練習していた森洋介(もりようすけ)さん(29)には、金メダルを取った頃のような、勝利に徹する姿勢とは違うように見える。「今の一番のパフォーマンスができればいいと捉えている感じがする」。そんな姿を「すごくすてきなことだ」と思う。

 「楽しんでほしい。そうすれば結果はついてくる」