見る人に夢や感動を与えてくれるスポーツ。県内のプロスポーツ関係者は、街なかでも活躍中だ。元スポーツ担当の記者が久しぶりに顔なじみの3人を訪ねてみた。
■バックス選手→カフェ店長へ 龍さんの場合
氷上でゴールを守った男が装いをスーツに替え、街なかを行く。「ガタイ」の良さが目を引くのは、アイスホッケーアジアリーグHC栃木日光アイスバックスの元ゴールキーパー、龍翔太郎(りゅうしょうたろう)さん(29)。スポーツイベントなどを手掛ける戸祭2丁目の「T&C」に就職し、カフェ立ち上げ事業に奔走している。
今秋、那須町にレンタサイクルを行うカフェをオープン予定で、店長兼バリスタを務める。店内デザインからコーヒー豆の選定、プロモーションまで幅広い業務を任され、参考のために宇都宮中心部の店を視察するのも仕事の一つだ。
慣れない日々に苦労しているかと思いきや、「努力しただけ自分に返ってくるのを実感できる。毎日充実しています」。ゴーリーがカフェの店長兼バリスタへ。次のステージでの“プレー”が楽しみだ。
■現役DF=飲食店オーナー 坂田選手の場合
街なか視察中に龍さんが立ち寄ったのがバックス時代のチームメートで現役ディフェンダーの坂田駿(さかたしゅん)選手(34)がオーナーを務める釜川沿いのスナック&バー「31CO.(みちこ)」(中央5丁目)。
2019年10月に開店したこの店は坂田選手の念願だったという。「実家が自営業で祖父も実業家。自分も現役時代から飲食店をやりたかった」。カウンターに立つことはなく、練習や試合に集中しながら経営の手腕を磨いている。アイスホッケーに限らず、さまざまな競技の関係者が訪れる穴場となっているらしい。
事業を拡大し、秋ごろにもユニオン通りにおにぎり屋をオープンする。「テークアウトもイートインもできる店。地元北海道の水産を生かしたメニューも提供したい。目標は5年で10店舗」と目を輝かせる。
■ロードレーサー→バーマスター 大久保さんの場合
自転車ロードレース宇都宮ブリッツェンの元選手、大久保陣(おおくぼじん)さん(32)は2月、馬場通り4丁目に「BAR JIN」を開いた。大久保さんは「31CO.」でアルバイトをした経験を持つ。縁はつながっている。
自転車選手からバーのマスターという異色の転身が気になり、訪ねた。黒がベースのシックな店内。チームカラーの赤とは違った印象が漂う。地域密着型のブリッツェン時代から「違う形で地域に密着し、新しい風を吹かせたい」と構想を練り、何種類もの酒を集めていたとか。
メニューのたこ焼きは、大阪府出身の大久保さんの自慢。甘口しょうゆを九州から取り寄せるなどこだわり抜き、「宇都宮で一番おいしいはず。想像の上をいくと思う」と胸を張る。
元チームメートの龍さんと坂田さん、坂田さんから刺激を受けた大久保さん。舞台は異なるが、新たな夢への思いは競技に対するそれくらい、熱かった。