「不妊になる」「遺伝子を組み換える」「マイクロチップ入り」「人口削減の陰謀」。インターネットなどで、新型コロナウイルスワクチンについて、数多くの流言が飛び交う▼過去にはワクチンが原因と疑われる健康被害が出た例もあり、接種に対して否定的な見方があるのは理解できる。だが、多くは科学的根拠がなく、河野太郎(こうのたろう)担当相も公式ブログでデマだと訴えた▼江戸末期、国内に伝わった天然痘予防の種痘について流布されたのは「牛になる」。痘苗が牛由来だったためだが、先頭に立って逆風を克服し種痘を広めた壬生藩藩医斎藤玄昌(さいとうげんしょう)の活躍が、壬生町歴史民俗資料館の企画展で紹介されている▼壬生藩が初めて種痘を行ったのは1850年2月。伝来翌年であり先進性に驚かされる。同時に史料にある「納得せぬ場合は村役人もただでは済まない」の一節からは、住民理解を深め接種を進めようとする覚悟と熱意がうかがえる▼玄昌らは、接種対象者の名前や年齢などを記した「取調帳」を作成。接種場を設定し、藩費で全村に組織的な医療システムを構築した。170年前に、今と変わらぬ取り組みがあった▼異論はあろうが、現状ではワクチンが最も頼りになる対抗措置であることは疑いようがない。打つ側も打たれる側も、先達の思いを継いで難敵に立ち向かいたい。