東大の「足の切り札」として活躍する阿久津選手。アメフトから転身した韋駄天が俊足でチームをけん引している=5月23日、明治神宮野球場(東大野球部提供)

 東京六大学野球リーグに異色の経歴を持つ盗塁王が誕生した。東京大3年で宇都宮高出身の阿久津怜生(あくつれお)外野手(21)だ。アメリカンフットボール部から転部し、“神宮デビュー”となった春季リーグで1位タイの6盗塁を記録。50メートル6秒1の快足でチームをけん引し、東京大7季ぶりの白星奪取にも貢献した韋駄天(いだてん)は「緊張より『やってやる』という気持ちだった」と振り返った。

 阿久津選手は小学時代、清原東学童に所属したが、右肘を故障し清原中では陸上競技に専念。短距離選手として実力を伸ばし、3年生で400メートルの日本一になった。しかし、野球への意欲は衰えておらず宇都宮高でのプレー再開を選択した。

 高校野球引退後は猛勉強で東京大に現役合格。明治神宮野球場のグラウンドに立つことを夢見たが、最初の練習見学で面食らった。「部員数は多いし、みんな体も大きくて…」。レベルの高さに自信を喪失、入部を断念した。その後はアメフトの道へ進みランニングバックとしてプレーした。

 しかし昨年8月、くすぶる情熱に火を付ける転機が訪れた。慶応大とのリーグ戦で死闘を繰り広げる野球部を観客席から見届け、「やっぱり野球がしたい」。周囲へ思いを打ち明け、すぐに野球部に移った。

 台頭に時間はかからず、春季リーグは主に1番・右翼で出場。5月23日、最終戦の法政大戦では二回に代走で登場し初球で盗塁。次打者の右前打で先制のホームに飛び込んだ。四回には内野ゴロで打点も挙げ2-0の勝利に貢献。仲間と共に歓喜の涙を流した。

 一方で高校時代のチームメート愛澤祐亮(あいざわゆうすけ)(20)選手は京都大3年で主力捕手として活躍。両大学は毎年夏ごろに「双青(そうせい)戦」と呼ばれる定期戦を開催しており、「楽しみ」と闘志を燃やしている。

 一躍、注目選手となったが「先のことは考えていない。今は東大で一つでも多く勝ちたい」と阿久津選手。自身の選択の正しさを勝利で証明する覚悟だ。