警察官らが見守る中、登校する児童=4月16日、鹿沼市

 千葉県八街市で下校中の小学生の列に飲酒運転とみられるトラックが突っ込み、5人が死傷した交通事故。理不尽な事故でわが子の命を突然奪われ、再発防止へ奔走してきた栃木県内の遺族たちは29日、今回の事故に心を痛め、教訓が生かされない憤りや悔しさを口にした。安全であるべき通学路で、登下校中の児童が巻き込まれる事故は全国で後を絶たず、県内でも過去5年間で計67人の児童が負傷している。

 道路から大きく逸脱した大型車、地面に転がるランドセル-。

 「自分の子どもが亡くなったあの日の光景と重なった」。報道を目にした伊原高弘(いはらたかひろ)さん(49)は胸が張り裂けそうになった。鹿沼市で2011年、クレーン車が登校中の児童の列に突っ込んだ6児童死亡事故で、長男大芽(たいが)君(9)を失った。

 子どもたちを歩かせていなければ。学校の近くに住んでいれば…。事故後は自らを責め続けた。「親の気持ちを思うと、掛ける言葉が見つからない」。悲痛を深くおもんぱかった。

 県警交通企画課によると、登下校中の小学生が車と接触するなどした人身事故の児童数は16~20年、11~15人で推移した。今年も28日現在で、7人が巻き込まれている。

 千葉県の事故現場はガードレールのない道路だった。鹿沼市の事故で次男卓馬(たくま)君(11)を奪われた大森利夫(おおもりとしお)さん(56)は、県内でも似たような通学路が多いと感じている。10年前もガードレールのない歩道にクレーン車が突っ込んだ。

 「こんなことでは子どもの登下校は親が車で送迎するしかなくなってしまう」と嘆く。「まずは大人がルールを守らないと。だけど、飲酒運転だとしたら防ぎようもない」と憤った。

 被害者支援センターとちぎ事務局長の和気(わき)みち子(こ)さんは2000年7月、事故でまな娘を奪われた。ハンドルを握っていたのは、仕事中に飲酒したトラック運転手。勤務地も同じ千葉県だ。「重なる部分ばかりでフラッシュバックした」

 同課によると、県内の飲酒運転事故は昨年71件発生した。巻き込まれた当事者を含め5人が死亡。今年は28日時点で31件が発生し、3人が死亡した。

 悪質運転の厳罰化や根絶、被害者支援を訴えるため、全国を精力的に回ってきた和気さん。「なぜ飲酒運転はなくならないの。なぜ教訓が生かされないの。命は二度と戻ってこないという当たり前のことをなぜ大人が分からないの」。いつまでも疑問が消えない。