合作絵本の制作に当たり、エリック・カールスタジオで意見を交わすカールさん(右)といわむらさん=2000年6月、米マサチューセッツ州・ノーサンプトン(いわむらかずお絵本の丘美術館提供)

カールさんの追悼コーナーといわむらさん=17日、那珂川町のいわむらかずお絵本の丘美術館

トークショーで来日時、いわむらかずお絵本の丘美術館の中庭で写真に収まるいわむらさん(右)とカールさん。寒かったため、いわむらさんがカールさんにベストを貸したという=2000年1月(いわむらかずお絵本の丘美術館提供)

「どこへいくの? To See My Friend!」表紙(1)

「どこへいくの? To See My Friend!」表紙。左からカールさん(上)、右からいわむらさんが描いた

合作絵本の制作に当たり、エリック・カールスタジオで意見を交わすカールさん(右)といわむらさん=2000年6月、米マサチューセッツ州・ノーサンプトン(いわむらかずお絵本の丘美術館提供) カールさんの追悼コーナーといわむらさん=17日、那珂川町のいわむらかずお絵本の丘美術館 トークショーで来日時、いわむらかずお絵本の丘美術館の中庭で写真に収まるいわむらさん(右)とカールさん。寒かったため、いわむらさんがカールさんにベストを貸したという=2000年1月(いわむらかずお絵本の丘美術館提供) 「どこへいくの? To See My Friend!」表紙(1) 「どこへいくの? To See My Friend!」表紙。左からカールさん(上)、右からいわむらさんが描いた

 世界的な人気絵本「はらぺこあおむし」などで知られる米国の絵本作家エリック・カールさんが5月23日、91歳でこの世を去った。「すごく愛らしい人」。20年前、出会ってすぐに意気投合し、合作で絵本を制作した栃木県益子町在住の絵本作家いわむらかずおさん(82)は当時を振り返り、故人をしのんだ。那珂川町のいわむらかずお絵本の丘美術館では一角に追悼コーナーを設け、カールさんの人柄がうかがえる貴重な資料を公開している。

 カールさんは生き物を描いた絵本を得意とし、アオムシが果物などさまざまな物を食べて美しいチョウになる「はらぺこあおむし」を1969年に出版。70カ国語以上に翻訳された。

 いわむらさんはカールさんを、「世界中の子どもたちに愛される絵本を出してきた。すごいこと」とたたえる。「はらぺこ-」は、ページに穴が開いている仕掛けなど「楽しめる要素がいっぱいある」といい、物語に関しても「アオムシが成長してチョウになるだけで魅力的なテーマなのに、アオムシが食べないような、子どもが大好きなケーキなんかを食べちゃう」と目を細めた。

 カールさんといわむらさんの出会いは2000年1月。同美術館で2人展を開くことになり、トークショーが催された。絵本が好き、子どもが好き、自然が好き。生活環境や背格好まで共通点は多く、話は弾んだ。

 合作の話はカールさんから提案があった。左からカールさんが、右からいわむらさんがそれぞれ描き、真ん中で終わる形。そうしたアイデアは以前から温めていたという。

 友達に会いに行く物語は、いわむらさんが考えた。日米それぞれの仕事場からメールやファクス、手紙で意見交換を重ね、半年後の6月、いわむらさんが渡米。カールさんは「スタジオ(仕事場)でずっと待っていられなかったよ」と最寄りの空港まで自ら車を運転し、迎えに来てくれた。

 完成した合作絵本は「どこへいくの? To See My Friend!」。カールさんはパンフレットに、この絵本は「“友情を探し求める”話」だとし、「エリック・カールといわむらかずおの話」である、とも書いている。

 いわむらさんにとっては唯一の合作絵本。同美術館に設けた追悼コーナーには「エリックさんと出会い、ふたりで絵本をつくったこと、とても楽しく、夢のような幸せな時間でした」とのメッセージを寄せた。

 カールさんの「愛らしさ」を感じさせる、こんなエピソードがある。いわむらさんと一緒に、建設中の那珂川町馬頭広重美術館を見学した時のこと。カールさんは、ヘルメットの内側の白い紙帽子を「もらっていいか」と手に取って頭に載せ、「有名なシェフみたいだろう?」と話すと、被り方を変えて「お医者さんみたいに見えるだろう?」とおどけてみせた。

 人を笑わせようという以前に「自分自身が楽しむ」という、いわむらさんとも共通する姿。「絵を描くことがとても好き、子どもが好きというのが絵に表れている」だけでなく、人柄にも子どもたちが引き付けられるのだという。

 追悼コーナーには、合作絵本の制作時にカールさんから届いた試作本や手紙、2人の写真などを展示している。現在開催中の「とっくんトラックぶぶー展」が終わる11月28日まで。