日本勢男子第1号の金メダルを狙う高藤=東京都目黒区

 家のリビングには、特別な二つのメダルが飾ってある。

 一つは昨年7月25日の練習後に首に掛けられた。「本当だったら今日、金メダルだから」と、所属するパーク24の吉田秀彦(よしだひでひこ)総監督から贈られた手作りの金メダル。「優しさがうれしかった。大会後、本物も一緒に飾ろうと思っている」。多くの人に応援されている、支えられていると改めて実感した。

 もう一つは2016年リオデジャネイロ五輪の銅メダル。「自分で“魔物”をつくりあげてしまった」「何やってんだ、俺」。いつもと違う精神状態で、実力を出し切れず。敗北にぼうぜんとした。そんな苦い思い出は今、東京五輪への原動力にもなっている。

 昨年、こんなことがあった。「なんで金メダルじゃないの? こっちは金メダルだよ」。長男の登喜寿(ときひさ)君(6)が運動会で取ったメダルを自慢げに見せてきた。

 少しずつ物の価値や意味が分かってきた息子のいたずらな笑顔に「本物の金メダルを見せてやろうじゃないか」。父親の心に一層火が付いた。

 自身が五輪を志したのは今の息子と同じ小学1年。2000年のシドニー五輪で表彰台の真ん中に立つ60キロ級の野村忠宏(のむらただひろ)や100キロ級の井上康生(いのうえこうせい)が輝いて見えた。「僕も金メダルが取りたい」。それが原点だった。

 リオ五輪後はメダルの色の差を痛感する5年間を過ごした。「どんな時でも金メダリストは前で、僕らは後ろで背景みたいな存在だった」。悔しさをかみしめながら、「この思いを晴らす舞台がある」と自らを磨き続けてきた。あとは畳の上で「2020年より強い高藤直寿」を表現するだけだ。

 【プロフィル】たかとう・なおひさ 1993年生まれ。下野市(旧国分寺町)出身。神奈川・東海大相模高-東海大。2016年リオデジャネイロ五輪男子60キロ級銅メダル。組み手は左。得意技は小内刈りなど。パーク24所属。160センチ。28歳。