スポーツクライミング初代金メダルの期待がかかる楢崎智

 スポーツクライミングとの出合いは10歳の時。幼稚園時から習った器械体操を小学4年で辞め、「何か新しいこと」を探していた。新聞のチラシを見てクライミングジムに通い始めた兄に、ついて行ったのがきっかけだった。

 「初めからめちゃくちゃ楽しかった」。遊びの延長で、どんどんはまった。

 世界で見ると小柄な楢崎智が国際舞台で活躍するルーツはこの頃にある。登る壁は大人と同じ。手が届かないホールド(突起物)に到達するため、飛び移ったり、つかむ力を強化したりした。得意とするホールド間を飛び移る「ランジ」の原型もつくられた。

 転機は高校3年時だった。ボルダリングで海外を転戦するワールドカップ(W杯)に初出場し、「世界のトップ選手と戦い、将来的に勝てる可能性を感じた」と卒業後のプロ転向を決意。だが医師の父は「2年で結果が出せなければ辞めた方がいい」と厳しかった。

 プロ1年目は高校3年時より成績を落とし「全然駄目だった」。だが勝負の2年目、2016年はボルダリングでW杯年間総合と世界選手権の2冠。世界ランキングも30位台から一気に1位へ。父からも「やれると思っていたよ」と認めてもらった。

 19年には世界選手権複合で日本人初優勝し、世界王者として東京五輪代表を勝ち取った。3種目複合のうち苦手なスピードを強化し、今年3月には日本記録を更新。五輪延期の1年間は「長かった」と言うが、「確実にパワーアップできた」と本番へ手応えを口にする。

 初代金メダル候補として夢舞台へ。「多少緊張はしているが、楽しみというのが一番。周囲の期待も感じるし、自分も自分自身に期待している」。壁を登り切った先には最高の景色が待っている。

 【プロフィル】ならさき・ともあ 1996年生まれ。宇都宮市出身。作新学院中-宇都宮北高。2016、19年にボルダリングW杯総合優勝。19年は世界選手権複合で日本人初の金メダルを獲得し、東京五輪代表に。169センチ、62キロ。TEAM au所属。