新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場=9日午後、さくら市桜野の氏家公民館

 栃木県内の各市町で、高齢者に対する新型コロナウイルスワクチンの接種枠を拡大する動きが相次いでいる。医療従事者を確保して集団接種や個別接種を新設するほか、市民らに予約の前倒しを求め、接種のペースアップを図っている。てこ入れの背景にあるのが、国の掲げる「7月末までの接種完了」という目標だ。ただし、その動きに翻弄(ほんろう)される各市町の担当者からは、戸惑いの声も漏れる。

 日光市は当初個別接種だけだったが、6月末から複数会場での集団接種を始める予定。接種枠の拡大に伴い、8月以降の接種を予約した人にはがきを送り、前倒しを進めている。担当職員は「7月末に向けやれることをやっていくしかない」との決意を明かした。

 足利市は、集団接種だけでは間に合わないため、55の医療機関の協力で約1万8千人分を個別接種でまかなう。当初9月末の完了予定だった那須塩原市も、13日の週から個別接種に取り組む。担当者は「接種に前向きな市民が増えており、国の方針に合わせて頑張ろうという思い」と話す。

 栃木市では、とちぎメディカルセンターが新たに会場を設けて個別接種を加速させる。下野市は自治医大の協力を得るほか、看護師による接種も視野に入れる。鹿沼市は県の事業で市外の医療従事者を確保するなどして、集団接種の会場を増やす。

 集団接種の実施日を増やしたさくら市は、6月の1週間あたりの接種人数が、5月の約5倍になった。担当者は「医療機関の協力が大きい。会場でも接種業務に慣れ、多く打てるようになった」と強調する。

 半面、現場の負担も増している。県南の自治体の担当者は「ワクチンを無駄にするなと言われ、コールセンターの対応、キャンセル手配、配送計画、医療機関との調整、集団接種の運営。職員はいっぱいいっぱい」と嘆く。「(7月末完了の)プレッシャーはものすごい」

 県央の自治体職員は「何が何でも終わらせろという国からの圧力そのもの」と漏らす。かかりつけ医で接種したいお年寄りに予約の前倒しや振り替えを求め、医師側と調整するのは心苦しいという。

 他の自治体からも「希望者が早く打てる環境は重要だが、住民はあおられている感じがするのでは」「市民の都合に合わせて打てば良く、7月末の完了が目的ではないはず」との懸念の声も上がった。