政府が新型コロナウイルスワクチンの職場接種を21日から可能とする方針を示したことを受け、栃木県内上場企業の受け止めは割れた。従業員や顧客の安全確保のため前向きに検討する企業もあり、打ち手の医師確保に動き始めた企業もある。一方、飲食や小売りの一部には「集団接種で一堂に会するリスクの方が高い」と慎重な姿勢を示す企業もある。具体的な接種に向けた流れは明らかになっておらず、多くの企業からは戸惑いの声も漏れている。

 政府方針から一夜明けた2日、エンジニアリング商社の藤井産業(宇都宮市)の藤井昌一(ふじいしょういち)社長は、実施に向けた検討を社内に指示した。同社は、社内会議室を会場と想定し、社員の家族向け接種についても可否を見極め始めた。自動車部品製造のムロコーポレーション(同)、食品素材製造の仙波糖化工業(真岡市)は既に、産業医から接種への協力を取り付けた。

 この他、元気寿司(宇都宮市)や情報サービスのTKC(同)、栃木銀行(同)も前向きに検討をしている。

 一方、飲食店チェーンを展開する企業の幹部は、「各店舗から(接種会場に)社員を集める感染リスクがある。打ち手医師の確保などのハードルも高い」と吐露する。小売業幹部も、「副反応を考えると集団接種は難しい」と安全面への懸念を示した。

 3日の県議会6月通常会議代表質問で、海老名英治(えびなえいじ)県保健福祉部長は、職場接種について「国から事務連絡は来たが、県の役割の詳細は明らかではない」と述べた。情報不足への不安は、接種に前向きな企業の間でも広がる。

 藤井産業は「手を挙げても、自治体に言えばいいのか、医療機関に言えばいいのか、手続きが明らかになっていない」と話す。政権幹部が「千人以上の大企業でスタートしたい」と表明したことも混乱を招いた。ムロコーポレーションは、「県内だけでは全社合わせても千人いない。(職場接種は)大企業を優先しているのではないだろうか」と戸惑いを見せた。