江戸時代の絵師伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)が描いた30幅からなる「動植綵絵(どうしょくさいえ)」の一つに「薔薇小禽(ばらしょうきん)図」がある。形や色が違う3種が咲き乱れ、当時から品種改良されたさまざまなバラが庶民の心をつかんでいたことがうかがえる▼バラは日本人を魅了する花の代表格だろう。丹精したバラの庭を公開し、多くの人とめでるのを何よりの楽しみにしている人もいる。那須烏山市横枕の根本健(ねもとけん)さん(70)、和子(かずこ)さん(66)夫妻は公開して8年になる▼普段は住民以外足を踏み入れないような山あい。徐々に苗を増やし、今は約350本が色とりどりに咲き誇る。根元に植えた草花や緑豊かな里山の借景も相まって、まるで秘密の花園に迷い込んだ気分になる▼昨年は新型コロナウイルスのまん延で見送らざるを得なかった。初の緊急事態宣言や外出自粛で散歩さえはばかられ、何とも息苦しかったのを思い出す▼事態はいまだ収束しないが、この一年で3密回避など対応のすべを身に付けた。今年は県内外から人が三々五々訪れては庭をゆっくり散策し、笑顔になって帰っていく▼これまでにぎわいとは、大勢が一堂に会し、わいわいと盛り上がることを意味した。でもコロナで常識が変わったように、こうした静かなにぎわいがあっていい。花を介した穏やかな触れ合いが疲れた心を癒やしてくれる。