ソフト「Nasu3D」の画面と奥勝さん=12日、さくら市

「Nasu3D」の画面。ピンクのドームは雪崩に遭遇したとされる地点を示している

ソフト「Nasu3D」の画面と奥勝さん=12日、さくら市 「Nasu3D」の画面。ピンクのドームは雪崩に遭遇したとされる地点を示している

 栃木県那須町で2017年3月に大田原高の生徒7人と教諭1人が亡くなった雪崩事故で、長男公輝(まさき)さん=当時(16)=を亡くした奥勝(おくまさる)さん(49)=さくら市=は、発生当時の現場や状況を再現したソフト「Nasu3D」を制作、ウェブサイトで公開している。勝さんはつらい記憶と向き合い、作業から離れた時期もあったが、状況をつぶさに知りたいと懸命に作り上げた。「事故を後世に残したい」と一人でも多くの人の教訓となるよう願っている。

 ソフトでは、一筋の光が山岳部員や教諭による「1班」がたどったルートを示す。スキー場センターハウスから雪崩に遭遇したと考えられる国有林内の地点までだ。

 国土地理院の地形データや消防のドローン映像などから、斜面の傾斜、植生、積雪などを3Dで再現した。3D空間内のロボットが移動し、その場所の風景などを見られる。状況を動画や文字でも説明。雪崩を発生させることもでき、事故の恐ろしさを視覚的に伝えている。

 勝さんは「事故検証委員会の報告書は事実をまとめてくれているが、詳細は分からない」と話す。その時現場でどう風が吹き、雪崩が起きた斜面は、公輝さんにどう見えたのか-。「自分なりに理解し、納得したかった」と言う。

 制作を始めると、わが子を亡くした悲しみ、事故が起きたことへの憤りなどを直視しなければならない。その苦悩ゆえ、作業を中断したこともあったが、仕事の合間をぬい約半年かけて何とか完成させた。

 現場は国有林で立ち入りが制限され、雪崩の危険ややぶによって近付けず、奥さんら遺族は事故から4年以上たった今もその地を踏めていない。ソフトを制作し、現場の状況を細かく思い描けるようになり「なぜ、そんな場所を登ったんだ」との思いが強まった。

 2月にソフトをウェブサイト「那須雪崩事故遺族・被害者の会」で公開して以来、サイト自体のアクセス数も増えた。「見るからに危険な斜面と分かった」などの感想も届いている。

 奥さんは「この事故が単なる山岳事故ではなく、引率者の甘い判断で起きた部活動の事故だったということが伝わっていれば」と訴え、再発防止に力を入れていくつもりだ。