1994年の規制緩和で、ビール製造免許に必要な年間最低製造量が引き下げられ、全国各地に小規模な地ビールの醸造所が誕生した。那須町の「那須高原ビール」もその一つ▼社長の小山田孝司(おやまだたかし)さん(68)は大学卒業後、那須塩原市で家具販売業を継いだが、ものづくりに興味があったことからビール造りに挑戦。96年10月に、東北自動車道那須インターチェンジ近くの雑木林の中に醸造所を設立した▼九尾の狐(きつね)伝説から名付けた長期熟成ビール「ナインテイルドフォックス」は、年月を重ねるごとに味の深みが増す。このほか地元産とちおとめを使った「いちごエール」など多様なラインアップを誇り、世界的なコンテストで何度も入賞している▼観光客や地元のホテル、旅館を主な取引先にしていたが東日本大震災で観光客が激減し、新たな販路として輸出に乗り出した。2013年にシンガポール、15年は台湾に送り、売り上げの約1割を占めている▼先月中旬には、香港屈指の繁華街で予約制の試飲会を開いた。「熟成ビールはウイスキーの味に近い」「ぜひ買いたい」と評判はよく、香港市場への本格参入が決まった▼個性的な地ビールは、育んだ風土に興味を持つきっかけになる可能性がある。旅する自由が戻ったら、その魅力を感じた人たちに、本県に足を運んでほしい。