「吾輩(わがはい)も“ネコ”である」。主人公の猫が愛媛県内を旅する絵本「かなしきデブ猫ちゃん」(愛媛新聞社刊)が地元で人気を呼んでいる。同紙への連載開始から3年、ドラマやアニメの放送も決まった▼夏目漱石の小説「坊っちゃん」ゆかりの道後温泉、石鎚山、瀬戸内海の島々…。デブ猫マルは飼い主の少女に叱られて家出し、県内各地を旅して、美しい自然や優しい人々と出会いながら成長していく▼ほのぼのとした冒険譚(たん)だが、伊方原発への反対の声や製紙工場の臭い、西日本豪雨の被害などの現実にも触れた▼松山市に移住した神奈川県生まれの小説家、早見和真(はやみ・かずまさ)さんと愛媛県生まれの絵本作家、かのうかりんさんの作品。「街や県全体で一つの物語を育て、子どもたちに生まれ育った街の魅力、物語の楽しさを伝えたいと思った」と早見さん▼ファンは子どもから中高年まで幅広い。絵本の発売日には行列ができ、地元劇団のミュージカル公演や朗読会も開かれた。南海放送は5月から実写版のスピンオフドラマを放送し、NHK松山放送局は年末に向けてアニメ化を発表した▼マルは絵本の中で「日本全国や世界も旅してみたい」と将来の夢を語る。子どもたちの郷土や物語への愛を育み、観光振興で地域の活性化につながるユニークな創作活動が全国各地に広がってほしい。