カンセキスタジアムとちぎ

番号が振られた県総合運動公園陸上競技場の車いす席。前列の観客が立ち上がると視界が遮られる(大塚さん提供)

県総合運動公園陸上競技場などの配置図

カンセキスタジアムとちぎ 番号が振られた県総合運動公園陸上競技場の車いす席。前列の観客が立ち上がると視界が遮られる(大塚さん提供) 県総合運動公園陸上競技場などの配置図

 2022年に本県で開催される全国障害者スポーツ大会(障スポ)のメイン会場となる宇都宮市の県総合運動公園陸上競技場(カンセキスタジアムとちぎ)を巡り、障害当事者らが「バリアフリー対策が不十分」と訴えている。前列の観客が立ち上がると車いす席の視界が遮られてしまうため、国際パラリンピック委員会(IPC)の基準を満たしていない。観客席入り口付近につながるスロープは距離が長く、「危険」と指摘する声も。障スポなどへの影響を懸念し、改修を求める声も挙がっている。

 競技場は総合スポーツゾーンの中核施設で、17年3月着工、20年に完成した。128席の車いす席は2階にある。

 車いす席からの視界の確保は、IPCが13年6月の基準で「前の人が立ち上がった場合、車いすに座っていても、その立ち上がった前の人と同じように邪魔されずに見えるようにすること」と定めた。国交省も15年7月に策定した指針で、同様の内容を規定した。

 競技場の整備方針について、県は県議会一般質問で「IPCの基準を参考にする」と答弁した。だが、競技場の車いす席は前列との高低差があまりなく、IPC基準などに合致しない。

 施設を運用する県スポーツ振興課は「国の指針が出た時点では基本設計が終わっていた。IPC基準は把握していたが、反映していない理由は分からない。前席の人が立つと見えないことは確認しており、前席を空席とすることで対応している」と説明した。

 また、2階にある観客席入り口付近に向かうスロープは、5%の勾配が約200メートル続く。全国でバリアフリーコンサルティング事業を手掛ける同市のNPO法人代表理事で車いす利用者の大塚訓平(おおつかくんぺい)さん(40)は「常軌を逸した長さ。けが人が出かねない」と指摘する。

 このほか、1基のみの一般客用エレベーターは、車いす利用者と同伴者が一緒だと数組しか乗れない。

 県内の障害者スポーツ団体の関係者は「長年全国の国体会場を見てきたが、これほど障害者に優しくない施設は初めて。大会運営に支障が出ないか不安がある」と明かした。

 障スポの運営を担う県全国障害者スポーツ大会課は「乗り越えるべき課題が多い施設と受け止めている。創意工夫で安心安全な大会を開催したい」との見解を示した。

 一方、大塚さんは県に対し「災害時には防災拠点にもなる施設。障害当事者の目線で調査や改修をすべきだ」と求めている。