アフリカ中部の南スーダンは長い内戦の末、2011年にスーダンから独立した。翌年のロンドン五輪で、この国から参加したマラソン選手が注目を集めた。その足跡を描く記録映画「戦火のランナー」が6月に公開される▼選手の名はグオル・マリアル。スーダン内戦が激化した8歳の時、両親が苦悩の末、1人で逃走させた。何とか難民キャンプにたどり着き01年、難民として米国に迎えられた▼高校で頭角を現し、初マラソンで五輪の参加標準記録を突破する。だが、問題が生じた。グオルはどの国を代表するのか-。独立直後の南スーダンには五輪委員会がない。敵国・スーダン代表は拒絶した▼結局は国際オリンピック委員会(IOC)に個人資格でのロンドン五輪出場を認められ完走する。映画のクライマックスで、生きて祖国に戻ってきた息子を前に、母親は泣きだし地面に崩れ落ちる▼東京五輪・パラリンピックを前に、前橋市で19年から、南スーダンの陸上選手たちが合宿を続けている。五輪が延期された後も、滞在を認められ練習に励む。選手たちは、グオルのいわば後輩に当たる▼南スーダンでは独立後も、2度武力紛争が発生した。その国から来た選手たちが背負っているもの、五輪で走ることの真の意味。私たちの知らない五輪を垣間見ることができる映画だ。