福祉関係者の間では、福祉事務所の窓口に生活保護の申請に来ても何らかの理由を付けて受理しないことを「水際作戦」、生活保護以外の制度を紹介して窓口に来させないことを「沖合作戦」と呼ぶそうだ▼国や県はそうした対応をしないよう指導を強めている。それでも保護を断られ、宇都宮市のフードバンクうつのみやに食料をもらいに来る人が後を絶たない。新型コロナ禍の長期化が拍車を掛ける▼電気やガス、水道を止められ、命が危ぶまれる人もいる。だが社会福祉士でもある理事の小澤勇治(おざわゆうじ)さん(64)によると、要保護の状態にあって実際に受けているのは、肌感覚として1割ほどという。あまりに少ない▼菅義偉(すがよしひで)首相が1月、「最終的には生活保護もある」と発言し、物議を醸した。そうならないよう支えるのは国の責務だ。一方で、最低限度の生活を営むのは国民に保障された当然の権利である▼首相の言葉に後押しされ、申請が増えたのかと思いきや、2月の県内保護世帯数は1万6499世帯で前年同月を0.5%上回った程度。さまざまな福祉支援金が拡充されたとはいえ、ほとんど伸びていないことに驚く▼生活保護に対する根強い偏見も受給を阻む。必要な人が必要なときに享受して、生活を立て直せる仕組みにしなければ、制度があっても安心して暮らせない。