展示された作品の前で思い出を語る藤沼さんと磯さん(右)=6月下旬、大田原市中央1丁目の「天よし」

 大田原市中央1丁目の再開発ビル「トコトコ大田原」にある天ぷら料理店「天よし」が30日、48年の歴史に幕を下ろした。「絶品」と称される天ぷらと共に、同市在住で人間国宝の竹工芸家藤沼昇(ふじぬまのぼる)さん(73)の作品をまとまった形で常設展示公開する唯一の場所として知る人ぞ知る名店だった。同所の店主磯四四雄(いそよしお)さん(76)は藤沼さんの創作活動を支えてきた存在で、藤沼さんの胸には「感謝と寂しさ」がある。日本の料理と芸術文化の粋を味わえる店の灯が惜しまれつつ静かに消えた。

 磯さんと藤沼さんの出会いは40年ほど前にさかのぼる。「この店の味は本物だ」。磯さんの天ぷらを食べ、そう感じた藤沼さんは店を再訪し、作品を「ここに置いてほしい」と頼んだ。

 30歳で脱サラした後、本格的に竹工芸に打ち込み始めた時期。「目が真剣だった」。思いを受け止めた磯さんは作品を購入し、それが藤沼さんの材料費となり活動の支えになった。