論語にある「徳不孤、必有隣」(徳は孤ならず、必ず隣あり)を日ごろの戒めとしている。寂しい老後への恐怖があるためで、「人間を磨かないと孤独に陥る」とわが身に言い聞かせている▼菅義偉(すがよしひで)首相が孤独問題の担当相を任命し、対策担当室を設置した。コロナ禍の長期化による問題の深刻化が背景にある。深刻さは自殺者数に現れている。警察庁によると2020年の自殺者は2万1081人で11年ぶりに増加した▼とりわけ女性は7026人と過去5年で最多、小中高生も過去最多だった。女性はパートなど非正規で働く人がコロナ禍の影響を強く受けたためとみられる。子どもたちにも休校などが影響を与えたようだ▼「孤独・社会的孤立」の問題は、本来もっと関心を持たれるべきだ。米シカゴ大のカシオポ教授(心理学)らの調査では、孤独な高齢者は睡眠障害などを発症しがちで、そうでない高齢者より早死にのリスクが14%高かった▼悪影響は健康面にとどまらない。ドイツ出身の社会心理・哲学者エーリッヒ・フロムは、孤立感を強めた人々が経済的苦境も合わさり、不安から逃れようと「大きな力強い全体に没入しようとした」と、戦前のナチス台頭の社会的背景を分析した(「自由からの逃走」)▼ウイルスの次は孤独の毒が社会を侵すことにならないか心配だ。