税込み価格が表記されたスーパーの商品のポップ=1日午前、大田原市中田原

 店頭で商品の消費税を抜いた価格だけの表示を認める特例措置が終了し、1日から税込みの総額表記が義務付けられるようになった。県内の消費者は支払額の分かりやすさを歓迎する一方、地域のスーパーは「値上がり」の誤解や競争の激化を警戒する。すぐに在庫の入れ替えができない書籍を扱う書店も、変更にかかる時間や手間を懸念している。

 1日、大田原市のスーパー「塩原屋中田原店」。買い物を終えた同市中田原、平山百合子(ひらやまゆりこ)さん(86)は「総額表記は支払額が分かりやすくていい。どうせ消費税を払うのだから」と歓迎した。

 那須塩原市と大田原市で店舗を展開する塩原屋は、税抜き表示から、総額と併記する形式に変更し、商品の値札などを全て替えた。その手間以上に笠間良一(かさまりょういち)社長(55)が警戒するのは、値上がり感と競争の激化だ。

 「1円、1%の原価にこだわっている。お客さまに対する分かりやすさは間違いないし、決して値上げでもないのだが、消費者心理は微妙ですから」。これまでは税抜き100グラム98円で勝負できたが、今後は総額表記での勝負を大手相手に強いられる可能性もある。

 税抜き価格のみの表示は、2004年4月以降認められていなかったが、14年、税率が8%に上がった時に特例措置として導入された。

 1日以降は「9800円+税」などの表記は認められないが、税込み価格が明瞭に表示されていれば、税抜き価格を併せた表示もできる。ただ「物価に消費税を紛れ込ませて痛税感と納税者意識を薄れさせる」(全国商工団体連合会)という批判もある。

 宇都宮市馬場通り2丁目の「喜久屋書店宇都宮店」では店頭に「新旧価格表示が混在します」との張り紙を出した。1日以降の新刊は総額表示だが、業界のガイドラインで在庫の回収や交換までは必要としない。

 書籍は取扱期間が長いものもあり、税率が低い当時の総額が表示されている商品もある。品田洋道(しなだひろみち)店長(45)は「出版社を含め表記の変更や周知に手間や費用、時間がかかる。今後税率が再び変わることも懸念材料」と訴える。

 栃木市吹上町のレストラン「肉のふきあげ栃木本店」も、店内メニューやホームページの価格表記の変更を3月下旬までに終えた。石橋利美(いしばしとしみ)常務(51)は「表記変更より軽減税率、テークアウト8%と10%の違いが浸透していないほうが気になる」と話した。