新型コロナウイルスの影響で1年延期となっていた東京五輪の聖火リレーが28日、福島県に続いて本県でスタートした。県南・県東地区を中心とした8市町約16.6キロで、92人のランナーが五輪やコロナ禍などへの思いを胸に聖火をつないだ。57年ぶりのリレーは午後から雨に降られたものの、県内の名所などを回って魅力を発信。コロナ対策で密集の回避を呼び掛ける異例の催しともなった。29日は8市町を100人が走り、県庁でフィナーレを迎える。
あしかが輝き大使を務めるタレント勝俣州和(かつまたくにかず)さん(56)が足利市総合運動公園に第1走者として登場し、午前9時18分にスタートを切った。出発式で福田富一(ふくだとみかず)知事は「一人一人のランナーの聖火が五輪の理想である平和・団結・友愛をつなぐバトンとなり、コロナ禍で県民の希望の光となってほしい」と願いを語った。
本堂が国宝に指定される鑁阿寺(ばんなじ)の境内では、足利大留学生が扮(ふん)する鎧(よろい)武者も登場した。佐野市の佐野厄よけ大師(惣宗寺)前や、小山市の小山御殿広場などを経由した後、茂木町では汽笛と白煙を上げた真岡鉄道のSLがランナーとの並走を成功させた。
栃木市では地元出身の女優・モデル石川恋(いしかわれん)さん(27)が巴波(うずま)川を遊覧船で進み、蔵の街の風情を笑顔で発信した。続いて真岡市のSLキューロク館前などを通過し、上三川町中心部を走った。
最終地点は那須烏山市。那須塩原市出身で2008年北京五輪に出場した陸上の渋井陽子(しぶいようこ)さん(42)が雨の中、午後8時13分にJR烏山駅前でゴールした。聖火到着を祝うイベント「セレブレーション」では、烏山山あげ保存会芸能部会が子ども歌舞伎を上演した。
リレーは大会の機運醸成や本県の魅力発信と、新型コロナ対策の両立が求められている。沿道やイベント会場では関係者が密集回避を呼び掛け続けた。初の日曜日でもあり、多くの観覧客が集まった地点もあったが、リレー中断には至らず大きな混乱はなかった。
大会組織委員会は終了後のオンライン記者会見で、足利市内の出発地と到着地周辺で密状態が発生したと指摘した上で「全体としては大きな問題なく実施できた」との認識を示した。
29日は那須町芦野の遊行庵(あん)を午前9時に出発。県北・県央地区を中心に世界遺産「日光の社寺」など約19.1キロを巡る。午後8時3分に県庁へ到着し、群馬県に聖火を引き継ぐ。