福島県双葉町に東日本大震災・原子力災害伝承館がある。JR常磐線の双葉駅から歩いて約30分。途中には徐々に朽ちる住宅、あるじもなく咲く梅、張り紙の残る病院…。あの日、全町避難を強いられた時の姿のままだ▼隣接する国の復興祈念公園の向こうに巨大な防潮堤。除染廃棄物などを保管する中間貯蔵施設も近くにあり、その奥に過酷事故を起こした東京電力福島第1原発が隠れる▼伝承館は「未曽有の複合災害の記録と経験・教訓、復興のあゆみを将来へ伝え、つないでゆく」ため福島県が整備した。開館して半年、事故の背景や教訓に対する踏み込みが甘いという厳しい指摘もあった。だが、福島県として事故を検証し、責任を取ろうという意思は感じられる▼1985年の日航ジャンボ機墜落事故の後、群馬県上野村の「御巣鷹の尾根」は、日本航空(JAL)の新人社員らの慰霊登山、安全教育の場となっている▼これに倣ったのか、東電は3年前、原発近くに廃炉資料館を置いた。事故と向き合い、教訓を社内外に伝えようとする施設という▼では国は、経済産業省はどうか。教訓を伝える国の施設はない。事故原因の追究と対応の検証に本気で取り組まず、東電に全てを負わせようとしているのか。原子力行政を推進した立場として、その責任の取り方を示すべきだ。