新型コロナウイルスに感染しているかどうかを調べるPCR検査が小紙に初めて登場したのは昨年の2月9日。なじみのない言葉だったが、今では目にしない日はない▼専用の装置で特定の遺伝子配列を増幅し検出するこの方法は「20世紀の最も重要な科学的進歩の一つ」とされ、近年は身近なところでも活用されている。例えば、本県特産のイチゴ▼苗から伸びる茎を切って子苗を増やすので、親苗が萎黄病などにかかっていれば子苗もウイルスを保有し、生産量を激減させる。県が検査を行い、感染していないお墨付きの苗を供給する体制が「いちご王国とちぎ」を支える▼野菜や花の病気の特定などでも使われる。育種では、かつては花が咲いて形状などを確認してから他の品種と掛け合わせていたが、PCRのおかげで遺伝子段階で特徴が分かり、効率化に役立っている▼宇都宮大のバイオサイエンス教育研究センターでは、PCRを用いた最先端の研究が進む。センター長の山根健治(やまねけんじ)農学部教授は切り花を延命させる研究に励む。「生命科学は物理などに比べいまだに謎が多い」と語り、可能性に夢を膨らませる▼今後は気候変動によりウイルスを媒介する虫の分布が変わるなどして、ますます農業分野でのPCRの重要性が高まるかもしれない。センターに対する期待は大きい。