約2千人が来場したブレックスの今季開幕戦。災害発生時の混乱を防ぐため、実践的な避難誘導訓練の方策を探っている=昨年10月、ブレックスアリーナ宇都宮

 もし試合中に大規模地震が起きたら-。県内プロチームは2011年の東日本大震災を契機に避難誘導マニュアルの作成・見直しを行ったが、いずれも訓練の実施には至っていない。新型コロナウイルス感染症対策も求められる中、観客の安全を確保する避難誘導はどうあるべきか。震災から10年。各チームは改めて対策の在り方を模索している。

 「発生があと数時間早ければどうなっていたか…」。2月13日深夜の地震で、本県は最大震度5強を観測した。宇都宮ブレックスのアリーナ運営グループマネジャー金井建介(かないけんすけ)さん(34)は胸をなで下ろした。ブレックスアリーナ宇都宮(宇都宮市体育館)でのホーム2連戦の初日を終えた夜のことだった。

 地震による施設の被害はなし。翌日の試合前にはリボンビジョンで地震の際の冷静な行動を呼び掛けたが、それまで目立った周知をしていなかったことに気づかされた。

 各会場ごとに避難誘導アナウンスや動線などのマニュアルは整備済みだが、「紙上の確認にとどまっている」。昨年予定していた避難訓練は、新型コロナウイルスの影響で延期となった。

 大震災後、国内プロチームの多くが避難誘導マニュアルの見直しや作成に取り組み、訓練を行っている。プロ野球楽天は9日、楽天生命パーク宮城で「試合中に震度5強の地震発生、売店2カ所から出火」という想定で消防訓練を実施。サッカーJ1神戸は近隣自治体などと連携し、南海トラフ地震を想定した津波避難訓練を行っている。

 一方、本県ではアイスホッケーアジアリーグのHC栃木日光アイスバックスや野球独立リーグ・ルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスが社員や警備スタッフによる動線確認を行っているものの、それ以上の動きはなし。J2栃木SCはテロを想定した官民連携訓練の経験があるだけで、地震を想定したものは未経験だ。

 「施設を借りる金銭的な問題」「会場設営後の時間的制約」など訓練に踏み切れない背景はさまざま。感染症対策で人を集めにくいこともネックになっている。

 災害の規模や種類によって観客に求める行動は異なるだけに、マニュアルの形骸化は避けたいところ。金井さんは「災害は待ってくれない。早い段階で訓練を行い、想定されるケースに一つずつ対処していきたい」と語った。