「写真撮影は“撮ってもいいです”と指定した場所に限ってください」。原発などの原子力施設への入構前に必ず注意を促される。「核物質防護のため」だ▼ウランなど核燃料物質は、扱い次第で核兵器の材料になり得る。盗難やテロへの懸念は大きい。写真から原発内部の詳細な構造や監視するカメラの位置、角度が分かれば、侵入リスクに直結する▼1997年に動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)東海事業所で起きた火災爆発事故では、事故の映像が公開された。だが、カメラの位置を明らかにしていいのか、関係者は公開ぎりぎりまで議論した▼そうした核物質防護の観点から、先に明らかになった東京電力柏崎刈羽原発の不正入室問題は言語道断だ。東電社員が他人のIDカードを使い原発運転の核心部である中央制御室に入った。厳格な手続きを社員自身がないがしろにした▼2001年の米中枢同時テロの後、日本も世界と軌を一にしてセキュリティーを強化してきたはずだったが、内実のお粗末さが露呈した。3カ月以上、原子力規制委員会に報告しなかった原子力規制庁も同罪だろう▼官民挙げてこの体たらくでは、再稼働の議論など話にならない。本質的に「核」の側面をはらむ危うい技術であることを、原発関係者はいま一度思い返すべきだ。