「ある朝、『おはようございます』というかわいい声が聞こえました。『バスが来ました』また声が聞こえました。そして、私の腰のあたりに温かい小さな手があたりました」-▼全国の信用組合が実施した「小さな助け合いの物語賞」で大賞を受賞した山崎浩敬(やまさき・ひろたか)さん(59)の作文は、和歌山市内のバス停が舞台。病気で視力を失った山崎さんのバス通勤を手伝っている女の子たちの姿が生き生きと描かれている▼1人での通勤に自信が持てず、仕事をやめようと考えていた時期もあったが、同じバス停を使う小学1年生の女児が毎朝、手伝ってくれるようになった。降りても点字ブロックの上まで誘導してくれる▼女児は中学生になり、妹が引き継いだ。現在は3人姉妹の末っ子の小学2年生が手伝い、他の子どもたちも支援の輪に加わっている▼乗車時間は約10分。子どもたちと学校行事などを巡る話をしてすごす。不安だった通勤が楽しい時間に変わった。仕事を続けてこられたのは女児らのおかげだと山崎さんは話す▼作文の賞金で購入した教材を寄付するため1月に小学校を訪ねた際、久しぶりに女児に会えた。「最近バスで見かけないね。また一緒に乗りたい」と気にかけてくれた。定年まで1年。山崎さんはコロナが落ち着き、通勤時間が通常に戻ることを心待ちにしている。