【那須雪崩】亡き息子に証書供え 鏑木さん、大金さん、浅井さん遺族

 那須町の国有林で昨年3月に起きた雪崩事故で山岳部の生徒、教員計8人が死亡した大田原高で1日、卒業式が行われた。事故当時、2年生だった鏑木悠輔(かぶらぎゆうすけ)さん、大金実(おおがねみのる)さん、浅井譲(あさいゆずる)さん=いずれも当時(17)=が迎えたはずの門出の日。「どれくらい大人になったろう」。遺族は二度と会えないつらい現実を受け止めようとしながら、亡き息子の成長した姿に思いをはせた。

 「高等学校の普通科を卒業したことを証する…」

 午前7時すぎ。鏑木悠輔さんの父浩之(ひろゆき)さん(52)=那須町寺子丙=が遺影を前に、事前に学校からもらった卒業証書を読み上げた。手作りの式。母恵理(えり)さん(50)や兄(22)、姉(20)に加え、「気持ちは一緒に卒業だから」と、式を控えた級友も訪れた。

 節目が来ても悠輔はいない。「守ってあげられなかった」という自責の念に駆られる。「成長した姿を想像することしかできないのがつらいね」。笑顔のまま、頬に涙を伝わせた。

 大金実さんは同校伝統の85キロ強歩の完歩、冬の朝に武道に励む寒稽古、無遅刻無欠席を3年間続ける「三冠王」を目指していた。「東京五輪に関わりたい」と都内の大学を志望し、「あの日」まで文武両道で頑張っていた。

 「きっと進学先も決まって、この日を迎えたと思う」と話す母仁子(じんこ)さん(49)=那須塩原市大原間=は「本人が楽しみにしていた将来がなくなったことが、どうしても悔しい」。卒業が近づき連日、友達が訪れてくれた。近況を話し「また来るね」と、まるでそこに息子がいるかのように帰っていく。

 浅井譲さんの母道子(みちこ)さん(42)=同市東豊浦=は卒業式の朝、遺影を前に「今日で高校を卒業して、前に進もうね」と自分に言い聞かせるように話し掛けた。

 3年生になれなかった息子。卒業証書をもらえると思っていなかったから、数日前に学校から連絡があった時は「受け取っていいのかな」と戸惑いもあった。