療養したホテルで記入した健康調査票などを前に自身の体験を話す女性(右)と夫=2月中旬、宇都宮市内

 栃木県内の新型コロナウイルス感染者が4千人を超える中、1月に家族ら5人以上が感染した宇都宮市の主婦(67)が下野新聞社の取材に応じ、闘病体験を明かした。当初は宿泊施設で療養していたが、体調悪化で入院する事態に。持病があり、いっときは「もう家に帰れない」と覚悟した。退院後の今も倦怠感は続くが、命を救ってくれた医療従事者や家族への感謝の思いが募るという。

 「陽性です」。1月15日夕方、電話で告げられたその言葉が、最初は理解できなかった。別居する家族の陽性が判明し、濃厚接触者として受けたPCR検査。「コロナはテレビの中の話で、私には関係ないと思っていた」だけに、ショックは大きかった。

■死が身近に

 2日後、共に陽性と判明した夫と市内のホテルでの療養が始まった。療養中は1日3回、体温や体調の変化などをシートに記録した。

 数日前から感じていた「風邪のような症状」は徐々に悪化した。ベッドから起き上がれないくらいの倦怠(けんたい)感。何を食べても味やにおいを感じることがなく、食欲は減退した。大好きなコーヒーは、真水のようだった。

 熱も39・7度まで上がった。ひどい悪寒に襲われ、セーターや上着を着込んでも収まらなかった。寝汗が止まらず、バスタオルを敷いたが、びっしょりになり何回も取り換えた。

 中等症と診断され、19日にホテルから市内の医療機関に移った。薬を服用すると症状は軽くなったが、血糖値が急上昇してしまった。糖尿病の持病があり、死が隣り合わせに感じた。

 そんな中、心に染みたのが病院のスタッフの励ましだった。「絶対、家に帰すから、大丈夫」。防護服に身を包んだ医師は肩を叩き、看護師も笑顔で落ち着かせる言葉を投げかけてくれた。

 家族の絆も強まった。「ばーば、待ってるよ」「一緒にご飯食べようね」。孫からの手紙が毎日届いた。

■新たな不安

 病院スタッフや家族の支えもあり、病状は落ち着いていった。だが退院が近づくと、新たな不安が頭をもたげた。糖尿病の治療で通院してもいいのか。今までのように地域の輪に入っていいのか。医師に相談すると、「胸を張って帰ろう。もし偏見で嫌な対応をされたら電話して。何とかするから」と背中を押してくれた。

 入院から10日後に退院した。だが今でも倦怠感が抜けず、少し動くと息が上がる。買い物に行くのも気が引け、「まだ積極的になれない自分がいる」という。

 それでも前を向く理由がある。「生かされた命。先生やスタッフ、家族に恩返しをしていきたい」