年末年始、新型コロナウイルス対応に忙殺された宇都宮市保健所保健予防課=19日、同市竹林町

新型コロナウイルス感染者「入院調整中」患者の推移

年末年始、新型コロナウイルス対応に忙殺された宇都宮市保健所保健予防課=19日、同市竹林町 新型コロナウイルス感染者「入院調整中」患者の推移

 年末年始に栃木県内を襲った新型コロナウイルス感染拡大の「第3波」。緊迫した局面で対応に当たった宇都宮市保健所やサポートした医師の姿を通して、当時の危機的な状況を振り返る。

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 昨年末、宇都宮市保健所で新型コロナウイルスに対応する保健予防課。

 木原晴子(きはらはるこ)課長(53)がパソコンをのぞき込むと、市内の医療機関から感染者の「発生届」が次々と送られてきた。

 「なぜ」。考えても答えは浮かばない。市内新規感染者は12月25日に過去最多の20人と増加基調で、大みそかは46人に上った。

 市は「3密回避」を強く呼び掛け、多くの人は飲酒を伴う会食を自粛する傾向に変化はない、と思っていた。忘年会出席者らを中心に感染が急拡大したことがはっきりしたのは、少し後になってからだ。

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 保健所はコロナの大波にのみ込まれ、保健師らが電話で多岐にわたる業務に忙殺された。

 -本人に対する陽性告知の有無など、発生届の発信元医療機関とのやりとり。

 -市外在住者に関する所轄保健所への調査依頼。

 -家族、出勤の有無、感染原因などの本人からの聞き取り。濃厚接触者や職場との連絡調整。入院調整…。

 新規感染者は年明けの4日に54人、5日79人、6日51人、7日72人と収まらない。他部署の市保健師、県の支援チームも応援に駆け付け、30人態勢での対応となった。

 偏見も根強い中、不安を募らせる本人の言葉に耳を傾ける。最初の聞き取りだけで30分から2時間を要する。入院調整中の自宅待機者には原則として朝夕、健康観察の電話を入れる。市内の待機者は100人を大きく超えていたとされ、負荷は大きかった。

 行動歴などの調査に手が回らない時もあった。それでも職員は「感染を拡大させない」と、未明までかかっても、外出自粛や家族と生活を分離することなどを伝え続けた。実務も担った保健師の菅谷寛子(すがやひろこ)係長(52)は「みんな使命感だけだった」としみじみ振り返る。

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 県内のコロナ病床は年末から一気に逼迫(ひっぱく)した。自宅待機者は1月17日は984人、市内でもピーク時に300人を上回ったとされ、高齢で基礎疾患がある人であっても入院は進まなかった。

 菅谷係長の頭には「命の選別」との言葉もよぎる。ずっと苦しかった。「ベッドが一つ空いたら、どの人を入れるの」。業務中のふとした拍子に理由も分からずに涙を流す職員もいた。

 大きな転機は1月8日。市の他部署から応援職員30人が投入された。分業と業務効率化が進む一方、新規感染者は減り始めた。

 「多くの協力をいただけることが分かり、ありがたい」。木原課長は次の波を想定して言う。「予兆を早く察知し、先手を打つ必要がある」