新型コロナウイルス患者の対応に当たる医療者=18日、宇都宮市中戸祭1丁目のNHO栃木医療センター(矢吹拓医長提供)

宿泊療養施設・病床利用イメージ

新型コロナウイルス患者の対応に当たる医療者=18日、宇都宮市中戸祭1丁目のNHO栃木医療センター(矢吹拓医長提供) 宿泊療養施設・病床利用イメージ

 年末年始に栃木県内を襲った新型コロナウイルス感染拡大の「第3波」。緊迫した局面で対応に当たった宇都宮市保健所やサポートした医師の姿を通して、当時の危機的な状況を振り返る。

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 今年の元旦。「あけましておめでとうございます」との言葉の後には、こうつづられていた。「感染爆発が危惧され、院内感染リスクも高まっています」

 国立病院機構(NHO)栃木医療センター(宇都宮市中戸祭1丁目)の矢吹拓(やぶきたく)内科医長(41)が病院幹部に宛てた「LINE(ライン)」のメッセージだ。

 県内でコロナの感染者が急増していた。12月に入ってから週に百数十人で推移していたが、年末の1週間だけで361人に上った。

 センターへの入院患者もやまない。市外からの入院も多く、数十床のコロナ病床は瞬く間に埋まった。

 コロナ以外でも冬場は患者の多い時期。医師たちは年末年始の休みを返上し、対応に当たった。他科へ研修に出る予定だった内科医師1人を急きょ、引き戻した。診療の負担を減らすため、院内で内科の初診受け付けを一時中止する方向で調整に入った。

 矢吹医長ら3人の医師がコロナ班として、病棟の対応に専念し、通常診療の当番表を作り替えた。「入院患者は多いが、これで何とか乗り切れる」

 しかし事態は大きく想像を超え、急転していった。

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 1月6日夜。新型コロナウイルス入院患者の診療に当たる医師が顔をそろえた。

 「このままじゃ、まずい」。矢吹医長が切り出した。

 県内の新規感染者は6日114人、7日170人に。年明け、自宅待機中の死者が出ていた。空き病床がなく、入院できない待機者も激増していた。

 病院幹部とも相談し方策を練る。センターのコロナ患者向け病棟の拡充も検討したが、既に態勢は「パンパン」だった。「容体変化に対応しにくい自宅待機者を減らす」を目標に、宇都宮市保健所と宿泊療養施設のホテルを支援することにした。

 「人手が足りない」。他院で研修中の医師を引き戻し、通常診療の態勢を見直して人材を捻出した。当初はホテルに、その後保健所に複数の医師を派遣した。

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 川口雄史(かわぐちゆうし)医師(28)は、保健所に派遣された。年末から病棟で濃密にコロナ診療をした一人だ。

 保健所のコロナ対応は、市の応援職員、国と県の支援チームが加わり、多い時で50人態勢になった。

 通常、保健所の常駐医師は羽金和彦(はがねかずひこ)所長(66)1人。川口医師らセンターの医師、国支援チームの医師は所長をサポートし、待機者の入院優先度の見極めなどに当たった。

 コロナ患者の多くが訴えるのは呼吸苦だ。川口医師は、健康観察する職員に「動いたときに苦しいか」を尋ねるように助言した。

 川口医師は「呼吸苦を感じても実際は血中酸素濃度は下がっておらず、不安の要素が大きかったケースもある」と言う。一方「呼吸苦を自覚しない場合があり、動いてもらうことで気が付けることがある。特に高齢者は要注意」とも。

 「患者の訴えに偏らず年齢、基礎疾患、病床の空きなどを総合的に判断しなければならない」。医師としての臨床経験、知見がベースだった。

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 宿泊療養施設の市内のホテルにも医師を派遣した。主に看護師と事務職員で患者に対応していた。

 年末年始は定員111人のうち30人前後しか収容していなかった。医師が医療的な視点を助言し、業務を効率化。実際に受け入れられる人数の引き上げを図った。収容は60人、70人と増えた。医師の常駐で看護師らに安心感が生まれた。

 川口医師は思う。「医師が容体見極めに関わらなければ、亡くなる人がもっと増えたかも知れない」