女性蔑視発言の陰に隠れたが、この発言も物議を醸した。東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗(もりよしろう)会長(12日辞任表明)が自民党会合で述べた「新型コロナウイルスがどういう形であろうと(五輪は)必ず開催する」だ▼昨年はコロナ禍でやむなく延期したのではなかったか。先行きは見えないが、もうコロナはどうでもいいというのは、責任者として乱暴にすぎる▼共同通信世論調査によると、五輪などの再延期や中止を求める声は、猛威を振るうコロナ禍を背景に82%超に達している。組織委などは再延期も中止も難しいとしているが、選択肢から完全に排除するのは、どのような心性なのか▼1月に死去した昭和史研究の作家半藤一利(はんどうかずとし)さんが、第2次大戦の戦争指導層の特徴として繰り返し批判していた点がある。「起きて困ることは、起きないんじゃないか」という根拠なき楽観論だ▼それは「絶対に起きない」という過信に発展し、あらゆる合理的な予測をなぎ倒した。森氏の「必ず開催する」という勇ましい発言と通底するところがないか▼森氏は2000年、首相として「日本は神の国」と発言し、問題となった。五輪開催の判断には、変異ウイルスの解明やワクチン接種の効果を含めて科学に基づく合理性がなければならない。神がかりはやめてくれ、と切に祈る。