進歩する難聴治療 放置で生活の質低下 自治医大の伊藤真人教授が指摘

進歩する難聴治療 放置で生活の質低下 自治医大の伊藤真人教授が指摘

 コミュニケーションが取りにくくなって生活の質(QOL)が低下するだけでなく、認知症のリスク要因にもなるとされる難聴。近年、聴力改善手術や人工内耳が進歩し、聞こえるようになるケースも増えた。自治医大とちぎ子ども医療センター小児耳鼻咽喉科の伊藤真人(いとうまこと)教授に難聴治療について聞いた。3月3日は「耳の日」。

 外耳、中耳の問題で聞き取りにくい難聴「伝音難聴」は医学的治療で聴力を改善できる。一方、内耳やそれより奥の神経系に障害がある難聴「感音難聴」、伝音難聴と感音難聴が重複した難聴「混合難聴」は治療が限られるため、補聴器や人工内耳を装着して聞こえを補う。

 伝音難聴を招きやすく、注意したいのが、慢性中耳炎。繰り返すと鼓膜に穴が空いた鼓膜穿孔(せんこう)が常態化し、音を十分捉えられなくなる。この場合、筋膜を土台にして鼓膜を再生させる「鼓膜形成術」で、聴力を回復させることができる。手術は局所麻酔で30分ほどで終わる。

 鼓膜穿孔を長期間放置すると、中耳のツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨からなる耳小骨まで炎症で破壊される。この状態になると破壊された部分を再建し、鼓膜を形成する「鼓室形成術」を行う。1週間ほどの入院が必要だが、耳だれも改善できる。鼓室形成術は近年技術が進歩し、術後成績が上がっているという。

 このほか、硬くなったアブミ骨の一部を人工のものに取り換え、動きをよくさせるアブミ骨手術を行うケースもある。

 慢性中耳炎は悪化すると内耳も障害を受けて混合難聴になるので、軽視しないようにしたい。

 伊藤教授は「手術で治せることを知らずに、何年も鼓膜の穴が空いたまま放置している慢性中耳炎の患者が多い。混合難聴になると治せなくなってしまうので早めに受診してほしい」と呼び掛ける。