新型コロナ対応を巡り、福田知事(奥)が県内25市町の首長らとオンラインで協議した市町村長会議。県と市町の連携の在り方が問われている=2月4日午後4時、県庁

 「情報がなければ支援できない」「情けない」-。この1年、新型コロナウイルスの感染拡大で栃木県が設置する保健所に業務が集中する一方、住民に最も近い市町は感染者の情報が得られないことで「できることもできない」というもどかしさを抱えてきた。日常生活を一変させた新たなウイルスは、県と市町の連携の在り方にも変化を迫ろうとしている。

 ホームパーティーで大規模なクラスター(感染者集団)が発生した佐野市。後に外国人が多く含まれていることが分かったが、当初は情報がなく「多言語での周知が遅れた」と担当者は振り返る。「市として感染予防の周知を図るために、感染した状況や傾向は知っておきたい」と望む。

 1年で350人以上の感染者が確認された小山市では、患者が自宅療養中に家族へ感染した例もあるとみられる。担当者は「保健所はすごく忙しい。家庭内で感染しないようにサポートすることは市町にもできるのに」と唇をかむ。「県は個人情報だから提供できないという。私たちも同じ行政として守秘義務をもって働いてるのになぜ、という思いはある」

 感染症法では、感染者に関する情報収集や調査、措置は保健所を持つ県や中核市などの権限とし、県内では宇都宮市を除く24市町について、県が5カ所の健康福祉センターを拠点に対応している。

 しかし「感染症法はこれほどの感染拡大を想定していなかった。行政改革で保健所も職員も減ってきた」と、自治医大の中村好一(なかむらよしかず)教授(公衆衛生学)は指摘する。「保健所はお手上げ状態。市町にも人材はいるし、細かな情報も持っている。積極的に協力を仰ぐべきだ」と連携強化の必要性を訴え「個人情報と人の命と、どちらが大切ですかという話だ」と問い掛ける。

 県は1月上旬、業務量が増えた健康福祉センターに保健師や職員を派遣するよう市町へ要請し、12市町が計43人を派遣可能と回答。今月12日現在、安足と県南の2センターに4市が保健師を派遣しているという。

 高齢者施設などでのクラスターが相次いだ足利市などは「学校や施設に関する情報は、早めに下りてくるようになった」といい、改善傾向もみられる。県感染症対策室は「いろいろな連携の仕方があると思うので、協議しながら進めていきたい」と模索している。