認知症の中で最も患者の多いアルツハイマー病が、いずれ「治る」病気になるかもしれない-。米食品医薬品局(FDA)は6月までに、製薬大手エーザイと米バイオジェンが開発した新薬「アデュカヌマブ」を承認するか判断を下す▼文芸春秋の元編集者でノンフィクション作家の下山進(しもやま・すすむ)さんは18年がかりの取材で、日米欧をまたぐ新薬開発に至るまでのアルツハイマー病解明のドラマを描いた「アルツハイマー征服」(KADOKAWA)を出版した▼本書の最終盤、遺伝性アルツハイマー病の家系に生まれた青森県の30代の女性が国際会議でスピーチする場面は感動的だ。彼女は国際的な観察研究プログラムに参加している。自分のためではなく、次の世代は発症の恐れから解放されるようにとの願いからだ▼アデュカヌマブは国内でも昨年12月に承認申請が出ている。気が早いが、さらに進んで保険適用になれば注目されるのは薬価だ▼値付け次第では年間薬剤費は数兆円規模。がん治療薬オプジーボのときのように公的医療保険の制度見直し論議につながりかねない。ただ、財政の見地だけから騒ぎ立てるのはできれば控えたい▼今回の新薬開発には「遺伝性患者の協力と貢献が欠かせなかった」と下山さん。大切なのは、青森の女性のような人々に救済がもたらされることだ。