「熱海の海岸」あるいは「熱海にて、日本の漁師たち」(1888年頃)

「アルパジョンを流れるオルジュ川のほとりで」(1925年、4月13日から展示)

「熱海の海岸」あるいは「熱海にて、日本の漁師たち」(1888年頃) 「アルパジョンを流れるオルジュ川のほとりで」(1925年、4月13日から展示)

 明治期の日本を描いたフランス人画家ジョルジュ・フェルディナン・ビゴー(1860~1927年)の作品や人間味に迫る企画展「ジョルジュ・ビゴー展」(宇都宮美術館、下野新聞社主催)が7日、宇都宮美術館で開幕する。世界有数300点超の同館コレクションから、展示替えを含め約250点を紹介。近代化を急ぐ日本を一歩引いた視点で観察した風刺画だけでなく、画家としての魅力やその人柄を読み解く。

 パリ万博の日本館展示で浮世絵にひかれ、1882年に来日したビゴーは、陸軍士官学校の画学教師や新聞・雑誌の挿絵画家、特派通信員などとして18年間近く滞在。激動期にあった明治中期の日本の姿を多くの作品に残した。

 「ビゴー作品はこれまで記録画として捉えられてきた。作品そのものの面白さやそこから見える人間性など、別の視点からも楽しんでもらうのが企画展の趣旨」と同館の藤原啓(ふじわらけい)学芸員。

 教科書などで目にする鹿鳴館や国際情勢を描いた鋭い風刺画で知られるビゴーには、ジャーナリストとして赴いた戦地や災害現場でのスケッチ、人々の暮らしや美しい風景を描いた水彩・油彩画などがある。

 ジャポニズムに沸くフランスから実際に日本まで来た行動力、スケッチを重ね見たものをしっかり描く写実性などから、資料としての価値が評価されてきたビゴー作品だが、「本当にありのままを描いていたのか」と疑問を投げ掛けながら見てほしいという。

 一例として藤原さんが挙げるのが「熱海の海岸」あるいは「熱海にて、日本の漁師たち」。魚を囲む日本人3人と、彼らから少し離れて海を見つめる1人の男。「男は日本になじめないビゴー自身」とみた上で、視線の先にある蒸気船を「帰りたいという郷愁、あるいは急激な西洋化の波にのみ込まれていく日本を暗示したともとれる」と話す。

 ビゴーと本県との関わりも深く、86年の日光旅行では日光街道の原風景も描きとどめ、92年には宇都宮で行われた大軍事演習も取材している。ただ軍事演習で描かれているメインは軍隊ではなく、それを物見遊山で見学する市井の人々。

 藤原さんは、「ビゴーが憧れたのは、のんびりした世界や素朴で豊かな自然。実際の風景の中に盛り込んで描きたかったものは何なのか。それを掘り起こす面白さがビゴー作品にはある」と魅力を説いている。

 5月16日まで。担当学芸員の解説、記念講演会を予定している。(問)同館028・643・0100。