昔は身元不明者ばかりだった。それが今、火葬した引き取り手のない遺骨の身元はほとんど分かる。神奈川県横須賀市の福祉専門官、北見万幸(きたみ・かずゆき)さんが昨秋、そんな話をシンポジウム「誰が死を支えるのか」で披露した▼終活支援の先進的事業で知られる同市は、緊急連絡先や遺言書の保管場所などの情報を市民に登録してもらい、いざというときに対応している。その制度作りのきっかけが、遺骨の身元にまつわる変化だった▼増え続ける1人暮らしの高齢者。身元は判明しても、万一の際の連絡先が分からない、親族がいない、あるいはコンタクトが難しい。背景にあるのは家族構成や価値観の激変だ。みとりから埋葬までを血縁で担うのは困難な時代になっている▼企画したのは、認定NPO法人エンディングセンター。樹木葬の一つである自然志向の集合型墓地「桜葬」を手掛け、墓を核とした緩やかな会員のつながりは「墓友」という言葉も生んだ。生前契約で家族に代わる死後のサポートも行う▼シングルで過ごし、後を託す親族がいないという70代の女性会員は「人間は誰かの手を借りないと旅立てないが、友人に頼むと負担を掛ける」と考えたという▼家族に依拠してきた人生の最期は、過去のモデルになりつつある。「葬送の社会化」は、時代の大きな要請になっていく。