職歴50年の一ノ瀬さん。眼鏡と同様に刀の修理も快く受けている

一ノ瀬さんが制作した刀剣。右端は眼鏡フレームのつる

職歴50年の一ノ瀬さん。眼鏡と同様に刀の修理も快く受けている 一ノ瀬さんが制作した刀剣。右端は眼鏡フレームのつる

 栃木県足利市井草町の老舗眼鏡店「ウチダメガネ」の店長一ノ瀬史郎(いちのせしろう)さん(69)が、不要な眼鏡フレームのつるで刀を制作し、全国の刀剣ファンを魅了している。熟練の調整技術で、長さ10センチ以下の刀身ばかりか鞘(さや)や柄(つか)まで再現。購入したファンが会員制交流サイト(SNS)に写真を投稿するなどし評判が広まっており、一ノ瀬さんは「これも一つのおもてなし」と業務の傍ら制作にいそしんでいる。

 きっかけは2018年に市内で行われた刀剣展。人気ゲーム「刀剣乱舞」のファンが多く訪れることから、店内にフィギュア用の撮影台を設置した。「キャラクターが持つ刀でも作ってみようか」と試作品を置いたところ称賛され、制作を頼まれるようになった。

 刀身は長さ約5~10センチ。合金製のつるを、レンズ加工用の玉摺機(たますりき)などで削り、反りや刃を整えている。鞘は白木を削り、柄巻きは刺しゅう糸で作り込む。鍔(つば)にも透かし彫りを施し、柄と刀身を固定する目釘(めくぎ)まで再現する凝りようだ。

 注文客からの要望は「鍔を洋風にしてほしい」「柄巻きの下に金の目貫(めぬき)(飾り)を施してほしい」などと多様だ。それに対し「難しい注文ほど燃える」と、独学で構造を調べながら応えてきた。

 美しく塗装し、完成品は手製の竹筒に梱包(こんぽう)する。丁寧な仕事ぶりにリピーターも多く、北は北海道、南は福岡まで受注制作した刀は100本を超えるという。

 注文客の多くは直接受け取りに訪れるという。店内に置かれたノートには、「人が温かい」「足利が好きになった」などのメッセージがあふれている。刀剣から生まれた交流に、一ノ瀬さんは「仕上がりに感動してくれる姿や、『また来たい』といった声が何より励みになる」と話している。