県内の医療関係4団体でつくる県四師会協議会の記者会見。稲野県医師会長(左から2人目)は「医療崩壊は始まっている」と訴えた=13日午後4時半、宇都宮市駒生町

 「明日の専門家会議の議題に、栃木県も載ることになる」

 13日に緊急事態宣言の対象地域に追加された栃木県。国から県に伝えられたのは前日の12日午後7時すぎ。その直前まで、県幹部らは協議を続けていた。練っていたのは、県独自で緊急事態宣言を発令するシナリオだった。

 対象地域への追加要請に向け、県は8日に国との協議を開始。だが手応えは厳しく、県内部では「対象から外れそうだ」との見方も強まっていた。12日になってようやく、福田富一(ふくだとみかず)知事が西村康稔(にしむらやすとし)経済再生担当相と電話会談に至ったのも、そうした背景がある。

 県幹部が明かす。「国が対象地域から除外したとしても、一日でも早く手を打たなければならなかった。栃木はすでに点滅でもない、赤信号だ」

 13日夜の臨時記者会見で福田知事は深刻な表情を見せ、本県の状況を説明した。「医療現場はぎりぎりの状況だ。県民の命に関わる問題と、医療崩壊が同時進行している」

 県内では年末年始に感染者が急激に拡大した。昨年12月中旬まで1日20~30人ほどで推移していた新規感染者は、同29日に83人の感染が確認されて以降、増加ペースが加速。1月5日からは1週間連続で100人を超えた。

 人口10万人当たりの直近1週間の感染者数は12日現在で44.31人。東京、神奈、千葉に次ぐ全国4番目の多さだ。政府分科会が4段階で示す感染状況では最も深刻な「ステージ4」(25人以上、爆発的な感染拡大)に達している。

 県は5日に、特に感染者が急増している宇都宮市で、酒類を提供する飲食店に営業時間を短縮するよう要請。だが、その後は県内全域でも感染が広がっていき、国への追加要請に踏み切ることになった。

 医療の逼迫(ひっぱく)は危機的状況だ。「今は限界を超えている」。13日に記者会見した稲野秀孝(いなのひでたか)県医師会長はそう訴えた。12日現在の病床稼働率は57.7%。13日の重症者は19人。同日の重症病床稼働率も過去最大を更新し41%に上っている。

 稲野会長は、ある医療機関では「他の患者の診療を控えることで重症者を診ている」と説明。本県の医療提供体制を東京の10分の1程度とし、「現実的に追い付かない」と窮状を語った。

 今回の緊急事態宣言で、どこまで感染を抑えられるかは未知数だ。福田知事は会見で強調した。「宣言解除は10万人当たり15人。その数字を目指す」

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 緊急事態宣言が再び栃木県に発令された。危機的状況にある医療体制、経営不安が増す飲食業界など県内の実情を緊急リポートする。