「医療崩壊は既に始まっていると言わざるを得ない」。新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、医療関係団体で構成する栃木県四師会協議会は13日、宇都宮市内で記者会見を開き、県医師会の稲野秀孝(いなのひでたか)会長が危機感をあらわにした。県内の医療提供体制は逼迫(ひっぱく)し、「限界を超えている」という。本県が国の緊急事態宣言の対象地域に追加されたことにも触れ、感染抑止に向けた県民の行動変容に期待を寄せた。
稲野会長は「北関東の中でも栃木は少ない方だったが、今は全く事態が変わってきてしまった」と訴える。年明け以降、感染が爆発的に増えた要因として、寒さの影響や首都圏と近い立地、若者の気の緩みを挙げた。
12日現在、コロナ患者の病床稼働率は57.7%まで上昇し、重症病床の稼働率も37%となった。「他県よりもまだ少ないと思うかもしれないが、現状は違う。残ったベッドを回転させるには、行政の支援などが必要だ」と強調する。
13日時点で入院調整中の患者は969人に上り、入院や宿泊療養に結びついていない。重症者数も増加しており、「重症者に集中、徹底して治療することが難しくなっている。マンパワーや体制は追いついていかない。普段からの準備を今後もう一度見直さなければならない」と話した。
この日、国の緊急事態宣言の対象地域として、本県の追加が決まった。「国の宣言の対象地域に入ることはインパクトが違う。県民もそのように受け取って行動を改めていただきたい」と切望する。「なんとか医療崩壊をくい止めたい。それには県民にできることがある。新たな感染者を出さないことだ」とし、手洗いや手指の消毒、外出の自粛など感染防止対策の徹底を求めた。
会見には稲野会長のほか、県歯科医師会の宮下均(みやしたひとし)会長、県薬剤師会の渡辺和裕(わたなべかずひろ)会長、県看護協会の朝野春美(あさのはるみ)会長が出席した。