質の高い肉牛を追い求める神長さん=塩谷町上平

 2021年、丑(うし)年が始まった。栃木県は生乳生産量が全国2位で、肉牛の飼養頭数も上位に食い込む。重要産業を支えるのは、多くの畜産農家の努力。高い技術で肉牛を育てるベテラン、子育てしながら乳牛に向き合う女性酪農家、今年も牛に情熱と愛情を注ぎ続ける2人を紹介する。

  ■  □  ■  □  ■  □

 「牛を飼っていると思うだろ。俺は飼われている。牛が全てを教えてくれる」

 「神長ファーム」(塩谷町上平)の神長恒夫(かみながつねお)さん(75)は、長男の俊行(としゆき)さん(48)とともに肉牛の繁殖、肥育を手掛ける。育てた牛の大半が、A5ランクのとちぎ和牛となる。高い技術は折り紙付きだ。

 約40年前に本格的に始めた。矢板市の獣医師松永俊明(まつながとしあき)さん(75)の指導を受け、和牛の受精卵を乳用牛に移植し、生産する「借り腹方式」を全国でも先駆的に導入。角を取り除いた育成法など、先進的な試みを次々取り入れた。新しい手法は反感も買ったが「見てろよ、10年後は俺の勝ちだ」と奮い立った。

 数年前からは、近親交配の度合いを示す「近交係数」の理論を用いて、血統や交配を考え抜き、高品質な牛を追い求め続けている。

 自らを「異端児」と称するが、全国に出向き、多くの人に教えを請い、今がある。「1人の力なんて微々たるもの。周りの人や仲間を大切にしなくちゃ」と強調する。発足に尽力した勉強会「とちぎの和牛を考える会」は30年以上続く。

 高校生と中学生の孫も、背中を追ってくれている。「まだまだやめられない。これからは世界。日本のいい肉を世界に売るんだ」