夕暮れの中、明かりがともる住宅街。新型コロナウイルスの感染拡大で県民は巣ごもり生活を余儀なくされた=12月下旬、宇都宮市内、小型無人機から

 1軒、また1軒と明かりがともる宇都宮市内の住宅街。いったいどれほどの不安や緊張、我慢が降りかかっただろうか。見えないウイルスとの闘い。世界は止まり、私たちの暮らしは激変した。遠くなってしまった人と人との物理的な距離。一方で心の親密さ、絆は強まったと信じたい。「当たり前の日常」の尊さと重さを胸に刻み、2020年が31日、幕を閉じる。

 未知のウイルスに翻弄(ほんろう)された1年だった。栃木県内で新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されたのは2月。国は4月に緊急事態宣言を全国に発令し、県民生活は大きく制限された。

 学校の臨時休校、外出自粛や店舗の休業要請-。働く親は子どもの居場所の確保に奔走し、観光地や繁華街からは人が消えた。感染者や医療従事者らへの理不尽な差別や偏見に県民は怒り、胸を痛めた。

 影響は東京五輪・パラリンピックにも及んだ。1年延期が決まり、聖火リレーなど準備を重ねた県内自治体や関係者は困惑した。先行きが見えない状況でも、来夏に照準を合わせるアスリートは希望の光だ。

 民間調査会社の都道府県魅力度ランキングで、本県は初の最下位に転落した。他県に誇れる観光資源は山ほどある。11月の知事選で県政史上初の5選を果たした福田富一(ふくだとみかず)知事のさらなる情報発信に期待したい。

 国内では辞任した安倍晋三(あべしんぞう)前首相のバトンを菅義偉(すがよしひで)首相が引き継いだ。コロナ禍での経済再生と感染抑止の両立。アクセルとブレーキを一緒に踏むのは容易ではなく、「Go To トラベル」の一時停止など政府の対応は混迷している。

 光も差した。栃木市出身の大谷桃子(おおたにももこ)選手がテニス全仏オープン車いす女子シングルスで県勢初の準優勝。プロ野球ドラフト会議では作新学院高出身の入江大生(いりえたいせい)投手(明大)がDeNAから単独1位指名された。

 人気漫画「鬼滅(きめつ)の刃」は熱狂を生み、劇場版の公開や単行本の発売に県民は列を作った。本県出身の吉川真(よしかわまこと)准教授が活躍した探査機「はやぶさ2」の帰還も記憶に新しい。

 コロナと向き合い迎える新しい時代。誰もが健やかに、穏やかに、自分らしく歩む未来を願いたい。