逆境乗り越え伝統継承

 

 昨年春、観光業に休業要請があり、通年であれば大型連休に絡む書き入れ時の5月、約1カ月間の休業を余儀なくされた。その間、売り上げゼロという大打撃を受けたが、その後の「Go To トラベルキャンペーン」、栃木県による「県民一家族一旅行」の推進により、県内や近隣県からの宿泊者が増加。昨年12月は例年以上の予約が入るなど、「マイクロツーリズムが急激に走り出した印象です」と、変化の激しかった一年を振り返る。

 現在もキャパシティー3割減で営業を続けるが、「お客様と従業員の安心・安全を第一にしながら、新しい生活様式に合わせた対応を続けています」と説明する。

 コロナ禍の厳しい状況の中で、最優先させたことが二つある。一つは「事業の存続」。もう一つは「雇用の確保」だ。「この先、需要が回復した際、スタッフがいないのでは商売になりません。私たちが目指すのは滞在型、通年型のホテル。その上で、安定雇用の従業員を確保しておきたいという思いがありました」。この言葉通り、苦しい中でも人員削減は一切行なわず、逆に、良い人材を確保できるチャンスと捉えて近年では最多の新卒採用を決めた。

 毎年クリスマスの時期に装飾する「日光金谷ツリー」も、昨年はやるべきかどうか熟慮したが、こういう時期だからこそコロナの終息を願って、また日光の街に明かりを灯したいとの思いを込めて点灯することを決断した。148年前に創業し、これまで多くの従業員に支えられてきた。「先人たちが味わった苦労に比べれば、コロナなんて大したことはない。弱音を吐いている場合ではないと思えた」と思いを明かす。「このホテルには先人たちが紡いできた歴史があります。伝統、文化を継承していくのが私たちの役目。まだまだ先を見据えて長寿企業を目指すと共に、世界に向けてクラシックホテルの魅力を伝えていきます」と力強く語った。