順子さんの遺影の前で思い出を振り返る孫の佑香さん(右)と知花さん=11月下旬、那須町稲沢

 新型コロナウイルスの影響で病院での面会が制限される中、終末期患者の自宅でのみとりに関心が高まっている。家族の最期を自宅で迎えた女性は「入院していたら会えなかったであろう人にも会えた」と振り返る。一方、がんなどの痛みをいかに在宅でケアするかが課題となっている。栃木県宇都宮市内で今月、在宅療養での緩和ケアに関する大会が開かれ、関係者が学びを深めた。

 那須町稲沢、主婦後藤美紀(ごとうみき)さん(48)は10月18日、義母の順子(じゅんこ)さんを自宅でみとった。享年70歳。子宮にがんが見つかり入院治療したが、亡くなる前の約1カ月間は自宅で過ごした。

 コロナの感染防止対策のため、入院時の面会は1人に制限された。「さみしかったのか、順子さんは頻繁に電話していた」と美紀さん。ケアマネジャーの勧めにより、自宅での療養を決めた。

 痛みの緩和は、高根沢町で在宅専門の診療所を営む医師渡辺邦彦(わたなべくにひこ)さん(61)が担った。緩和ケア認定看護師と訪問看護師も連携して相談に対応。美紀さんは「支えてくれる人の存在で安心できた」と感謝する。

 順子さんの孫の佑香(ゆか)さん(18)と知花(ちか)さん(13)は、退院後に順子さんと駄菓子を取り合うように食べたことが思い出に残っている。佑花さんは「いつもと同じように暮らすことができた」と話す。

 県内で約15年間、在宅緩和ケアを続ける渡辺さん。病院での面会制限が続く中、「(自宅に)帰りたいと望む入院患者は増えている」と感じているという。

 一方、緩和ケアへの理解は「まだまだ進んでいない」とも指摘する。日本緩和医療学会が認定する専門医は、4月1日時点で県内に渡辺さんを含めて4人のみ。在宅医療の現場で活動する専門医は、全国的にみても数が少ない。

 12月5日、宇都宮市内で日本在宅ホスピス協会の全国大会が開かれた。地域での緩和ケアがテーマで、シンポジウムには訪問看護師や介護士ら専門職が登壇。コロナ禍で病院から在宅療養を希望する人が増えている現状や、緩和ケア認定看護師と訪問看護師が連携して在宅での終末期を支えた事例などを報告した。

 大会長を務めた渡辺さんは「専門職がそれぞれの役割を発揮できる、強いチームを地域で増やしたい」と話した。